バイオアップサイクル

化学工業における環境問題

化学工業は以下の環境問題を抱えています。

  • 化学品製造用原料の転換:主たる原料が石油であることから、地球環境悪化と原料枯渇という問題があります。
  • 化学プロセス技術の問題点:エネルギー消費量が大きい場合があるほか、製造過程で危険な化合物が排出されることが多いという問題があります。
  • 製品の廃棄処理:化学品の多くは、埋立てや焼却という運命を辿っており、ゴミ処理問題が解決されていません。焼却した場合には、炭酸ガスが発生します。
  • 資源の再循環:化学品は再利用される割合が少ないために、化学品資源の再循環は重要な課題であります。

バイオプロセス技術は環境にやさしい

ジナリスが化学品製造に用いるバイオプロセス技術は、以下の点で環境にやさしい技術です。

  • 常温常圧の反応です。
  • 特に酸化反応では、化学プロセスと比べて、エネルギー消費が少ない。
  • 危険な試薬を使わず、危険な廃棄物を出さないグリーンケミストリーです。
  • バイオプロセス技術を用いると、お酒やビールの発酵工場と同じような設備を用いて化学品を製造できます。

生分解性プラスチックは環境にやさしいか

これまで廃棄プラスチック(廃プラ)は環境中に捨てられることが多かったので、生分解性プラスチックが環境保護の代名詞でした。 ただし、生分解性プラスチックの多くは、土壌中で完全に分解されるまでに長い時間がかかります。 生分解性プラスチックは、資源を一方的に消費し、環境中に捨てられるという思想に基づいて開発されてきた製品です。
もし廃プラを回収し、再資源化するのであれば、必ずしもその生分解性は必要ありません。 むしろ、プラスチックの生分解性はユーザのニーズを充足しないこともあります

リサイクル、アップサイクル、ダウンサイクル

欧米では、廃棄物の再資源化で元と同等の物質が得られる場合は「リサイクル」と呼び、価値が上がった物質が得られる場合には「アップサイクル」と呼びます。 これに対し、廃棄物を燃焼すると、価値の低い熱しか得られないことから、焼却のような再資源化は「ダウンサイクル」と呼びます。
金属は精錬するコストが高いことから、そのリサイクル事業はスムーズに推進されています。 一方、容器包装リサイクル法の施行により、ペットボトルを中心とする一部の廃プラはリサイクルされていますが、そのリサイクル事業を黒字化させることは容易でないことがわかっています。 もし廃プラのアップサイクル技術が開発できれば、経済的にも成立しうる再資源化法になる可能性があります。

バイオアップサイクルとは

ジナリスでは、廃プラを回収し化学的に分解した後、得られる分解物(モノマー)を原料として、バイオプロセス技術により高付加価値化学品を製造するシステム(バイオアップサイクル)の開発を進めています。 バイオアップサイクルでは、微生物培養廃液の処理工程で排出される汚泥を肥料化することも目指します(図参照)。



バイオアップサイクルは、次のように、環境にやさしく、経済性を考慮した化学品の再循環システムです。

  • 廃プラのゴミ処理問題を解決できるうえ、廃プラを化学品製造の原料として利用します。
  • 化学品の製造には環境にやさしいバイオプロセス技術を利用します。
  • フタル酸類を構成成分とするポリエステルを加水分解すると、フタル酸類とグリコール類が生成しますが、いずれも生分解性があるので、バイオプロセスにより化学品を製造した際に排出される廃液は活性汚泥法で処理できます。
  • 廃プラの分解により得られるフタル酸類は、精製度が悪くても原料として利用できます。また、バージンのフタル酸類の価格と比べて、価格で5倍以上の高付加価値製品を製造するので、経済的に成立しやすいと考えられます。
  • 国内の廃棄バイオマス利用の場合、収集コストや輸送コストが問題になることがあります。これに対し、廃プラは都市ゴミであり、市民の手によって一次処理され、収集システムも確立されているので、経済的に成立しやすいと考えられます。

テレフタル酸を原料とするバイオ化学品製造の意義

テレフタル酸は、PETボトルやポリエステル繊維などの原料として年間2,000万トン以上生産されています。 最近ではバイオマス由来のグリコール類を原料として製造されたテレフタル酸系ポリエステル樹脂の利用が増えるなど、年々テレフタル酸の需要が増えています。 ジナリスでは、これらポリエステルの再資源化により得られるテレフタル酸を有効活用するために、テレフタル酸から高付加価値化学品を製造するバイオプロセス技術の開発を進めています。
また最近テレフタル酸をバイオマスを原料として製造する技術が少なくとも5種類開発され、またPepsiCoが100%植物原料としてPETを製造できることを発表しました。 このように、テレフタル酸やPETは完全に持続可能な資源になったので、ジナリスが確立した化学品製造技術も持続可能な製法となりました。